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02箱根スイーツコレクション

箱根スイーツコレクション
4年ぶりの復活プロジェクト!
箱根スイーツコレクション

〈 OUTLINE 〉

箱根を彩るイベント「箱根スイーツコレクション」。箱根のホテルやカフェ、レストランがテーマに沿って期間限定のオリジナルスイーツを提供するこのイベントは、毎年多くのスイーツファンに愛されてきた。しかし2020年から新型コロナの影響で開催がやむなく中断に。4年の期間を経て2024年春に再開を果たした。中断からの復活プロジェクトを担当した渡辺美希の仕事に迫る。

OUTLINE

2014年入社。大学では国際観光学科で旅行マーケティングを専攻し、旅行企画やプレゼンテーションを学んだ。「箱根のことが大好きです。世界の人にその魅力を伝えたいです」とアピールし、小田急箱根に入社。最初の配属となった箱根登山鉄道では社内で初の女性車掌に抜擢され約2年半務めた。2018年から営業企画部で箱根誘致のイベントの仕事の一環で「箱根スイーツコレクション」に携わる。その後箱根DMO(一般財団法人箱根町観光協会)に2年間出向。2023年より現部署。箱根ナビや箱根スイーツコレクション等のキャンペーン担当。

総合職 営業企画部
Miki Watanabe渡辺 美希

episode001

開催24回の実績あるイベント
コロナ自粛からの復活

2008年からスタートした「箱根スイーツコレクション」は、春と秋にそれぞれ約2カ月間の期間限定で開催してきた人気のイベントだ。これまで「満開♡フラワースイーツ」、「フォトジェニックスイーツ」、「カラダ癒されスイーツ」など毎回ユニークなテーマで開催され、箱根のカフェ、レストラン、甘味処などが、テーマに合った限定スイーツを披露する。2020年までに24回開催され、毎回箱根の約30店舗が参加。そのときだけに出会える華やかなスイーツを楽しみに、多くの人が箱根に訪れていた。

だが2020年春、新型コロナ感染防止のための自粛で本イベントは中断され、以後開催ができない状態に。

「箱根スイーツコレクション」の2024年春復活の話が持ち上がったのは2023年の夏。担当となったのは入社11年目の渡辺美希だ。以前もスイーツコレクションを担当したことがあり、渡辺自身もその復活を夢見てきた。

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自粛期間で変化した「旅」の作法。
ネットでの「事前予約」を導入

4年ぶりの開催に向けて最も課題となったのが、来客者をどのように増やしていくか、ということ。ブランクがあるので、過去と同じようにパンフレットを作って配布するだけではこれまでと同じような集客、費用対効果が得られないかもしれない。

ちょうどその頃グループ会社の小田急トラベル「旅の予約サイト」との連携の話が持ち上がった。サイトをリニューアルしたタイミングでスイーツコレクションに声がかかった。

「これまでのスイーツコレクションは直接現地に行って注文する方法でしたが、小田急電鉄(小田急トラベル)のサイトと連携して、スイーツをネットで事前予約できる方法に変更することにしました」

その決断には根拠があった。2年間出向していた箱根DMOで、観光客の行動変化を学んだからだ。

「箱根DMOが行っているアンケート調査やデータ分析で分かったことですが、新型コロナの時期を経て、全ての世代が旅行の前にSNSなどで情報収集し、レストランなども事前予約をする方向に変化していました。つまり旅行は事前の情報と予約ができることが重要になっているということ。旅の予約ができるシステムはお客さまの動向に合っていると思いました」

これまではスイーツコレクション目当てでお店に行ったら売り切れで残念な思いをすることもあったが、事前の予約販売ができるようになればそのようなこともなくなり、利用者にもメリットがある。

さらに、お店側も予約数を事前把握できればフードロスを減らすことができる。予約サイトとの連携で、バージョンアップした箱根スイーツコレクションの実現を叶えることになった。

episode003

「春を祝おう!パーティースイーツ」
テーマに込めた思い

次に決めなければいけないのは、開催テーマ。スイーツコレクションの方向性を示す最も重要な仕事だ。テーマは集客につながる魅力的なものでなければならない。さらにパティシエはテーマに沿って新しいスイーツを考えるので、スケジュール上では10月には決まっている必要がある。限られた時間の中で、渡辺はコンセプトを練っていった。

「私自身、4年ぶりに箱根スイーツコレクションを復活できることがとにかくうれしかったので、『お祝い』を表現したいと考えていました。コロナ禍で旅行に行けなかったり、卒業旅行を断念したりした人たちも多かったと思います。自粛が明けて我慢していたものを解き放って、みんなで盛り上がろう!という思いを込めて考えました」

20代女性が目にする雑誌やSNSなどを参考に、キーワードをピックアップしながら練っていく。できあがったいくつかの案を社内外の人やターゲット年齢の人たちに見てもらう。

そうして2024年のテーマは「春を祝おう!パーティースイーツ」に決まった。

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先輩たちが紡いできた歴史を
つないでいきたい

テーマと販売の枠組みが決まり、11月から最も重要な参加店舗への営業が始まった。

「私は人と話すのが好きなので、皆さまと会話できるのはとても楽しかったですね。コロナ明けで久しぶりにお会いする人も多かったので、スイーツコレクションをご案内できることがすごくうれしかったです。事前予約制のシステムに変更したこともあり、1軒1軒直接会って説明に回りました」

以前からおつきあいのある店舗の多くがコレクション復活を喜んでくれた。その一方で担当者が変わり、コレクションのことを知らない店舗も少なからずあった。

「このままではこれまで小田急箱根が培ってきた箱根スイーツコレクションを失ってしまう、と思うこともありました。初めてスイーツコレクションをご案内するお店には、その歴史からひとつひとつ丁寧に説明をするようこだわりました。先輩たちが脈々と受け継いできたこのイベントを絶やしてはいけないという思いで取り組んでいました」

お店の新規開拓にも力を入れた。箱根スイーツコレクションの後援である箱根町、箱根DMO、箱根温泉旅館ホテル協同組合、小田原箱根商工会議所、箱根プロモーションフォーラム。あらゆる関係者の協力を得て、31店舗の参画が決まった。

「どんな関係者の方でも、施設・店舗の方でも、難しいこともどうしたら解決できるのか一緒に考えてくれます。箱根に関わる人たちの中に『箱根に来た人に喜んでいただきたい』という思いが根底に流れていると思っています。」

12月末、テーマである「春を祝おう!パーティースイーツ」に沿って各店舗で作られたスイーツの撮影が始まる。

「お店のパティシエやシェフのこだわりが詰まった渾身の作品に出会えるこのときが一番楽しみです! 若手パティシエのチャレンジの場にしていただいているお店もあり、モチベーションになっていると言っていただくこともあります。テーマの解釈やスイーツに込めた思いなども伺い、情報としてまとめていくのですが、作り手の方々の仕事への愛情に触れると、箱根の食を高いクオリティで支えているみなさまは箱根のかけがえのない資産であると感じます」

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プロモーションスタート。
「待ってました!」の声

2024年春のスイーツコレクションの開催は3月1日から4月22日。サイト告知、ポスター掲示、パンフレット配布などのプロモーションは、学生たちが春休みの計画をたてはじめる2月上旬からスタートした。

渡辺が心配していたことのひとつが、これまでのファンの反応だ。4年ぶりの開催なので特に若い人たちから忘れられているかもしれない。SNSに2024年春の開催をリリース投稿した直後、その不安は消え去った。SNSで目にしたのは「やっと復活!」「待ってました!」というコメントだ。

「SNSの反応は本当にうれしかったですね。『復活してくれてありがとうございます』というコメントをしてくれた方もいらっしゃいました。待っている人がたくさんいた。復活開催して本当によかったと思いました」

新型コロナの自粛期間に開催ができなかった時期は渡辺自身も歯痒い思いをしただけに、その喜びはひとしおだった。
そして開催を喜んだのはお客さまだけではない。

「参加店からも『すごく懐かしいお客さまが来てくれました』と嬉しいお声をいただきました。スイーツコレクションの開催を知って、久しぶりに来てくださったそうです。また箱根に来るきっかけをつくることができた。そのことが本当に嬉しかったです」

「春を祝おう!パーティースイーツ」は、これまでのファンに加え、新規のお客さまも引き込む結果になった。SNSでは「#箱根スイーツコレクション2024」の投稿数も伸び、華やかなスイーツの写真やイラスト、ショップカードのコレクションなどの投稿でにぎやかに。2024年春の「箱根スイーツコレクション」は無事に4年ぶりの復活を果たした。

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箱根の魅力を引き出す
新しい観光資源をつくる

渡辺はすでに次のコレクションに向けて走り始めている。2025年春のコレクションテーマは「年に1度のとっておき ごほうびスイーツ」に決定。

「このところ、旅行や食などの贅沢に手を出しにくいという気分が広がっています。『ごほうび』という言葉で、『年に一度のとっておきで、頑張った私にごほうびをあげたいな』って、少し背中を押されるような気持ちになってくれるといいなと思っています」

毎年のイベントの仕事に取り組みながらも、渡辺の視線の先にあるのは観光地箱根の可能性がさらに広がっていく未来だ。

「25回の歴史をもつ箱根スイーツコレクションは、小田急箱根が主催となって、箱根の施設のみなさんと一緒につくりあげてきた貴重なイベント。そして箱根のかけがえのない資産であり観光資源です。小田急電鉄と共催で、よりパワーアップしたことで国内のお客さまのファンもより増えてきていると思うので、さらに世界に発信していく仕事もやってみたいですね。そして箱根の自然や温泉についてもスイーツコレクションのように新しい発信方法を考えていきたいなと思っています」

箱根の魅力をつくり、広げていくアイデアは尽きることがないようだ。